甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
着替えろって言われたって、とそう思いながら身を起こすと、フィーネが
ここに連れられてきたときの、服と靴が置いてあった。
これに着替えろってことかしら
それに出かけるって......。
怪訝に思いながらも着替えを済ませ、部屋を出る。
短い廊下を歩き、ひらけたところはダイニングらしく、テーブルセットがあり
窓際にソファが置かれていて、そのソファに座りユアンが新聞を広げていた。
窓から差し込む光が、眩いユアンの黄金色の髪に吸い込まれていってる
よう。
新聞を読む、ただそれだけの姿なのに、人を惹きつける何かがある。
本当に出かけるつもりらしく、上着を着込み、タイまでしめて、足を組んで
いる姿はやはり優雅に見えた。
掴みどころのない人......。
貴族だと思っていたら、結婚詐欺師で、そして今度は劇作家だという。
じっと見つめていたら、顔を起こしたユアンと目があった。
すぐに反らしたけれど、見つめていたのがばれたかしら?
立ち上がったユアンが歩いてきて、フィーネの肩を押し、そのまま並んで
歩くかたちになって、フィーネは慌てて口をひらいた。
「いったいどこに行くの?」
「買い物に」
短くそう答えると、ユアンはフィーネを外に連れ出し、待たせていた馬車に
フィーネを押し込んだ。