甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 衣料店のつぎは、靴屋、そして、婦人物の小物を扱う店。


   「いったい、なにを考えてるの」

   「なにが?」

   「買い物て言ったけど、全部、私のものばかりじゃない」


 朝食を食べなかったからお腹が空いただろうと、色々な店をまわった後に
 連れ込まれたレストランで、フィーネはユアンに詰めよった。


   「必要だと思ったから」

   「必要って、今更?」


 そう言ったフィーネに、ユアンはすっと目をそらすとむすっとした声で
 答える。


   「マリーになんとかするように言ったけど、それだけじゃあ駄目だって
    ことに気づいてなかった。
    あの格好で娼館にいたら、娼婦だと思われてもしょうがない」


 確かに昨日フィーネを襲った酔っ払いは、着ていた服を見て、商売女だろ
 とフィーネに言った。

 だから服を買いに来たの?


   「それにもう、君を娼館には置いとけないから、昨日つかった部屋
    あそこをこれからは使えばいい。」

   「えっ」

   「あそこはセオの部屋だけど、あいつはいないことが多いし、
    セオの物はなにも置いてないから」

   「で、でも、」

   「でも?」


 娼館で酔っ払いに襲われるのも問題だけど、若い男の人と一軒家に二人っきり
 っていうのもどうなのかしら......。



   「あの...... あの家には、ユアンだけが住んでるの?」


 フィーネの質問に、ユアンはフィーネをじっと見た。


   「僕が君を襲いにいくと_ _」

   「そんなこと思ってないわよ!!」


 本当のところ心配しているのはそういうことなのに、フィーネは
 腰を浮かせると、大声で否定した。

 店の客が、何事かとこちらを見る。

 その視線に気づいてすとんと腰を下ろし、顔を赤くしたフィーネを見て
 ユアンが、くくっと肩を震わせて笑っている。


   「娼館の方がいいなら、いままで通りにするけど」

   「い、いいえ、娼館はいやです」

   「じゃあ、しょうがないね」


 笑いをこらえながら、ユアンがそう言った。
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