甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 マーケットは、メインストリートから少し西に歩いた川沿いにあった。

 テントを張っただけの露店が並ぶマーケットには変わったものを扱う店が
 多い。

 東の国でしかとれない希少なハーブ、怪しげな木彫りの人形、明らかに
 模造品だとわかる派手なデザインの装飾品。

 男爵令嬢だったころ暮らした土地は田舎だったから、こんな大きな
 マーケットはなかったし、ボルドール伯爵邸にいたころは、自由な
 外出などできなかったから、フィーネはマーケットの様々なものが
 珍しくてしかたなかった。

 知らぬ間にフィーネはユアンの腕に手をまわしていた。

 人前で明らかにおもしろがって近づいてくるユアンを、警戒していたはず
 なのに。

 人通りが多いからはぐれないためもあるけれど、自分が見つけた珍しい
 ものをユアンにも見せたくて、腕を引くうちにそうなったのだ。

 興味を引いたものを手にとって眺め、ユアンにそれを見せる。

 まるで恋人同士か、仲の良い夫婦のようにふるまっていることに
 フィーネは全然気づいてない、フィーネが見せたものに、ユアンが楽しそう
 に頷くとフィーネは満足な気持ちになる。

 自分の隣を歩く人がどういう人だったか、ということはもう頭にはなく、
 戸惑う気持ちも消えている。

 二人を包む空気は、穏やかで、やさしい。
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