甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
子供をいきなり蹴り飛ばすなんて!
暴力を止めようと男の前に出ようとしたが、別の男がずいっと
フィーネの前に立ちふさがった。
「おっと、お嬢さん。悪いことは言わねぇ、さっさとどこかに行きな」
「子供相手になんてことをするの!」
「アルンはルールを破ったんだ。あの布はゴードンの旦那の専売に
なってて、たとえ端切れでも勝手に売ることはできねぇ
あいつはそれを知ってて、場所を変えては下手な小遣い稼ぎを
しやがる。
俺たちは当然のことをしてるんだよ」
「だからって、暴力はいけないわ」
「言っても聞かないやつにはしょうがないだろう」
フィーネがどんなに言っても、男は何かと言い返し、フィーネを
少年に近づけまいとする。
話は通じそうになく、助けにも行けず、フィーネは周りを見回した。
近くに店を出しているものも、通りを歩いているものも、怖々こちら
の様子を見てはいるが、フィーネと目があうとさっと顔をそむけるか
足早に通りすぎていってしまう。
なぜ? なぜ、誰も助けてくれないの。
「みんなルールをわきまえているのさ」
周りの様子とフィーネの顔を見て、目の前の男がにやにや笑いながら
そう言った。
結局男たちは、少年からブリキ箱をとりあげ、地面にぺっ、と唾を
吐くと去っていった。
すぐにフィーネは少年に駆け寄ったが、身体のあちこちに暴行を受けた
少年は目を開けない。
少年の頭を膝の上に抱え上げ、どうしようかと途方にくれたとき
”フィーネ!”と名を呼びこちらにむかって走ってくるユアンの姿が
見えた。
張り詰めていた気持ちが緩む。
ユアンの姿がぼやけて見える。
涙が盛り上がり、零れおちそうになってフィーネは慌てて目を伏せた。