甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「その新しいドレス、ユアンに買ってもらったんだろ」

   「はい」

   「だったら、働く必要ないじゃないか」


 バーバラの言葉はちくりっとフィーネの胸を刺した。

 確かにドレスも、靴も、髪を止めているピンもユアンに買ってもらった
 ものだけど、それじゃあ、駄目だから。

 昨晩眠れなくて、ずっとユアンの言葉を考え続けた。

 明確な答えはでなかったけど、だからってなにもしないでいるのは
 嫌で、とりあえず思いついたことを、フィーネはやってみることに
 したのだ。


   「自分のお金が必要なんです」

   「......」

   「お客はとれないですけど」


 その言葉にバーバラは、ふんっと鼻をならす。


   「できることはなんでもやります、お願いします」


 バーバラはそっぽを向いていたが、


   「しょうがないねぇ」


 と言うと、根負けしたと言うように肩を竦めてみせた。


   「わかった、あんたを雇うよ。詳しいことは後で話をするから
    まずは食事をすませな」

   「ありがとうございます」


 はねるように頭を下げ、うれしげに背を向けたフィーネの背中に
 バーバラが呟く。


   「働いてみるがいいさ、やれるもんならね」
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