甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
その一言に、フィーネは今日一日大変だったことや、バーバラに言われた
こと、その上、馬車の中の冷たいユアンの物言いまで思い出して、頭に
血が上った。
「そうよ!! 私は無力だわ、その上バカよ!」
大声でそう言い返す。
「諦めるってことが楽になる方法だって、私だって知ってるわ!
だって、伯爵邸で私はずっと、諦めていたもの。
でも、そうしなさいってアルンには言えない、自分がするのは
かまわないけど、人にはそうして欲しくない......。
あなただってそうじゃない、諦めろって言うくせに、わたしを助ける
じゃない、だから、バカな私は、こんがらがるの!」
疲れ果てて、もう言い返す力など残っていないと思っていたのに、
フィーネは大声でまくしたてた。
「きっと大切ななにかを諦めるしかなくて、傷付いたから、あなたは
そう言うしかないんだって思いたくなる。
詐欺師で、最低で、最悪な男だって思っているに、助けられて
うれしいの」
しかし、だんだんなにが言いたいのかわからくなって、フィーネは混乱
した。
このまま勢いにまかせて喋っていたら、どんどんフィーネの知らない心の
扉があいていって、まだフィーネ自身も気づいていない想いが言葉になって
飛びだしそうな気がして、フィーネは突然、怖くなった。
「だから!私は...... 私は......」
そう言いながら後ずさる。
「助けたいの! アルンも、あなたも!」
最後に自分でも意味不明な言葉をユアンに投げつけて、フィーネはくるり
とふりかえると、ユアンの前から逃げだした。