甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
部屋からフィーネが飛びだして行ったのと入れ違うように入ってきたのは
セオだった。
呆気にとられた顔で立ちつくしているユアンを見て、セオは首をかしげる。
「お前らしくないな、女の子相手に熱くなって怒鳴るなんて。
お前はいつも徹底的に優しいか、冷たいかのどちらかだろ」
「聞いてたのか」
「最初からな」
「そっか...... じゃあ、彼女の言う意味がわかったか?」
ユアンの問いかけに、セオは器用に片眉だけあげてみせると、
「彼女の心は複雑らしい」
と言った。
「ふくざつ?」
「ああ、フクザツ......」
言いながら、セオはユアンを指差す。
「なんだよ、この指は」
「自覚なし?」
「なんの自覚だ」
「フクザツの」
「はぁ?」
指を突きつけたまま、セオがぷっと吹き出したので、ユアンは顔を
しかめた。
からかうなよと呟きながら、どっかとデスクの椅子の腰を下ろし、
ふとデスクの上に目を落として、ユアンは叫び声をあげた。
「あー!、フィタとフォタを調べようとしてたんだった!!」
デスクに肘をつき、頭を抱えこんでうーと唸り、ユアンは低い声をもらす。
「あいつにだけは、俺の力が効かない、姿を見破られ、その上こうやって
ことごとく執筆の邪魔をされる。
あいつは...... あいつは、疫病神だ......」
そうぶつぶつ呟くユアンを見下ろして、セオはやれやれと溜息をついた。
お前も相当フクザツだな、と思いながら。