甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
次の日、めざめたフィーネは、身なりを整えるともう一度働けるかどうか
娼館にいってバーバラに確かめようと思った。
そしてできれば、ドゥーラの手伝いだけにしてもらう。
要望が通る可能性は限りなくゼロに近かったが、とにかく今はもうここで
働くよりしょうがないのだ。
決意を胸に、これ以上は無理というくらい真剣な顔をして部屋をでたところで
美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐって、フィーネは鼻をひくひくさせた。
どうやら匂いは、ダイニングの横にくっついている小さな台所から
漂ってくる。
悲壮な決意など、すっかり頭から抜け落ちて、匂いにつられて足を進めれば、
台所に立つ背の高い男の人の姿が見えた。
その人は器用にフライパンを揺すり、黄金色に輝く ”それ” をぽんと白い皿の上に
のせ、ダイニングの方を向いたところで、壁際からじっとこちらを見ている
フィーネをみつけて、にっこりとほほえんだ。
「やあ、おはよう、よく眠れた?」
さわやかに、親しみをこめて朝の挨拶をされ、戸惑いながらフィーネも挨拶を
かえす。
誰だろう、この人...... でも、見たことがある。
よく思い出せないまま、フィーネが距離をとっていると、その男の人は手に
持っていた皿をテーブルに置き、ダイニングの椅子を引いてフィーネを誘った。
「良かったら朝食を一緒にどうかな、オムレツをつくったんだけど」