甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 次の日、めざめたフィーネは、身なりを整えるともう一度働けるかどうか
 娼館にいってバーバラに確かめようと思った。

 そしてできれば、ドゥーラの手伝いだけにしてもらう。

 要望が通る可能性は限りなくゼロに近かったが、とにかく今はもうここで
 働くよりしょうがないのだ。

 決意を胸に、これ以上は無理というくらい真剣な顔をして部屋をでたところで
 美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐって、フィーネは鼻をひくひくさせた。

 どうやら匂いは、ダイニングの横にくっついている小さな台所から
 漂ってくる。

 悲壮な決意など、すっかり頭から抜け落ちて、匂いにつられて足を進めれば、
 台所に立つ背の高い男の人の姿が見えた。

 その人は器用にフライパンを揺すり、黄金色に輝く ”それ” をぽんと白い皿の上に
 のせ、ダイニングの方を向いたところで、壁際からじっとこちらを見ている
 フィーネをみつけて、にっこりとほほえんだ。


   「やあ、おはよう、よく眠れた?」


 さわやかに、親しみをこめて朝の挨拶をされ、戸惑いながらフィーネも挨拶を
 かえす。

 誰だろう、この人...... でも、見たことがある。

 よく思い出せないまま、フィーネが距離をとっていると、その男の人は手に
 持っていた皿をテーブルに置き、ダイニングの椅子を引いてフィーネを誘った。


   「良かったら朝食を一緒にどうかな、オムレツをつくったんだけど」


 
< 68 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop