甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「たった一日で?」

   「早いほうがいいと思ったんです。ちょうど出入りの酒屋さん
    に会って、薬が欲しいって言ったら、買ってきてくれるって」


 しばらくユアンは驚いた顔のまま、フィーネを見つめていたが、とうとう
 脱力したように肩を落とし、デスクに肘をつくと、手で顔をおおって
 俯いてしまった。

 そしてそのままなにも言わないから、フィーネは不安になる。


   「あ、あの......。」


 おずおずと声をかけると、低く呟くような声が、指の間から漏れた。


   「わかった、金は僕が返しておく」

   「それじゃあ、また、あなたにお金を使わせちゃうわ」


 慌ててフィーネがそう言えば、指の間から、さらに低くなった唸る
 ような声が聞こえた。


   「僕が、お前のために、ほいほいと喜んで、簡単に金を払うと、
    思っているのか......」

   「え?」


 ぱっと顔から手を離し、勢いよくたちあがったユアンが、フィーネを
 睨みつけながら、人差し指を突きつける。


   「いいか、お前は今日から、僕の助手だ!
    言われたことは、素早く、的確にこなせ。
    支払った金の分、死ぬほどこきつかってやるから 覚悟しろ!!』

   「 は......は、はいっ!」


 ユアンの剣幕に、フィーネは必死に背筋を伸ばすと、気をつけの姿勢をする。

 そんなフィーネに、突き刺す勢いで、ユアンはさらに指を突きつけた。


   「わかったら、すぐにコーヒーを淹れてこい、すぐにだ!」


 鼓膜が破れるかと思うほどの大声でそう怒鳴りつけられ、フィーネは
 返事もそこそこに、部屋をとびだした。
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