甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
(7) どうしてこうなる?
かりかりとペンが紙の上を走る。
軽快にペンが走っている間はいい、それがぴたっと止まり眉間に
しわを寄せたユアンが、うーんと考え込むのを見て、フィーネは
ごくりと唾を飲み込む。
「フィーネ、デルタ男神が岩に刻んだ誓いの文字は ”DURUM”
でいいか?」
「 ”DERUM” だと思うけど......」
「確かだろうな」
「さ、さぁ?」
曖昧な返事を返すと、ユアンがじろりと睨んだ。
「調べます」
素直にそう言って、本棚にむかったフィーネは、隙間なくびっしりと本が
詰まった、高〜い本棚を見上げてため息をついた。
この膨大な本の中から神話に関する本を選びだして、無数にある神話の中から
ドンピシャの記述を探しださなければならない。
デルタ男神の記述がありそうな本を何冊か選び出し、本を広げたところで
後ろで聞こえていたペンの音がぴたりと止まった。
ぎくっとフィーネは肩を竦ませる。
「フィーネ、誓いの言葉を刻んだデルタ神は、森の猟師から供物の肉を
受けとる。
それは、鹿肉か、猪肉か?」
そこのところは ”獣の肉” の一言ですませたらだめなの?、そう言いたいのを
堪え、フィーネはヤケクソ気味に答えた。
「はい、それも調べます、 ええ、調べますとも!」