甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
そんなことを何回となく繰り返し、一日がすぎていく。
唯一調べ物から解放されるのは、セオがユアンの部屋にやってきた
とき。
いったいセオはなにをしているのか、時々いなくなるかと思えば、
ふらりとユアンの部屋にやってきて、そうすると、ユアンはペンを置き、
フィーネは必ず部屋を追い出されるのだ。
調べ物から解放されたからといって、のんびりとはしていられない。
ユアンの身の回りの細々としたことは、命令されるうちに入っていないよう
だが、放っておけばユアンは食事もとらず書き続けるから、仕方なくフィーネ
は世話をやくことにしている。
セオに教えてもらって、簡単なサラダとスープはつくれるようになったから
それと、マリーが娼館から届けてくれる料理をあわせて食事の準備をする。
いつでも食べられるようにと、トレーにのせてユアンの部屋にはこんでも
ユアンはほんの少ししか手をつけなくて、結局、さめてしまった料理は
下げることになり、フィーネは少し心配になるのだ。
「こんなことを続けてたら、病気になっちゃうんじゃないかしら」
ユアンがどうなろうとフィーネにとってはどうでもいいことなのに
心配する気持ちは、フィーネの中からなかなか消えていかなかった。
そして、もう一つ気がかりなことがある。
頼んだ薬が未だに手元に届かず、もう一週間以上がすぎていた。
出入りの酒屋は二日おきにやってくるけど、あのとき頼んだ酒屋の息子
は、あれきり姿をみせない。
必ず買ってくるよ と言った彼は嘘をつくような人にはみえなかったけど
でも、騙されたのかしら?
もし、そうだとしたら、気持ちがくじける。
前借りしたお金をそっくりそのまま渡してしまっているし、ユアンがこの
ことを知ったら
「ものすごくバカにするでしょうね......」
ユアンが辛辣な言葉を言うときの、冷めた表情までも思い浮かんで
フィーネは憂鬱な気分になった。