甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
ユアンが手をつけなかった昼食を持って、フィーネは庭にでた。
娼館との間にあるたいして広くもない中庭には小さな畑があって、
生ゴミは畑の隅に埋めている。
「もったいないわ」
とぼやきながら食べられなかった料理を畑の隅に埋めていたフィーネ
は、ぽんと肩をたたかれた。
「やあ、やっぱり君だ。よかったよ、出逢えて」
そう言ってフィーネの後ろに立っていたのは、手に薬の袋らしきものを持った
酒屋の息子だ。
ちゃんと、買ってきてくれたんだわ。
今、まさに ”薬が届かないこと” を心配し、ユアンにバカにされることを
思って、滅入った気分になっていたフィーネは、驚き、勢いよくたちあがる。
「頼まれたものを買ってきたんだけど、君は厨房にいなくてさ。
厨房のおばあさんに聞いても、何も答えてくれないし、
どうしようかと思ったよ」
そう言いながら、彼はぽりぽりと頭をかく。
「あ、ありがとう、私、忘れられちゃったかと思ったの」
フィーネがそう言うと、酒屋の息子は慌てた声をだした。
「店のほうが忙しくてさ、なかなか買いにいけなかったんだ」
騙されてお金だけ取られたのではなかったと思えば、フィーネは自然と笑顔に
なっていた。
そんなフィーネの笑顔に、彼は顔を赤くする。
「と、ところで、ここの誰かが病気なの?」
「違うの」
フィーネは問われるままに、アルンとアルンの母親のことを話していた。