甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
本当になんてハンサムな人なのかしら。
昨晩、薄明かりの中でさえ目を引いた
顔立ちは、明るい日の下では思わず見とれてしまうほど素敵だ。
貴族の中の貴族といった風貌で、彼はじっとフィーネを見ていて、
居たたまれなくなったフィーネは、少々吃りながら口をひらいた。
「あ、あの、も、もしなんでしたら、クリスティーナを起こして
きましょうか?」
「いや、その必要はないよ、僕は君に逢いに来たんだから」
どうして? 私なんかに、
そう思う気持ちの陰になんだか浮き立つような気持ちが湧きあがる。
でも、クリスティーナの恋人が一体私になんの用があるというの。
戸惑いと警戒、でもどこかに期待を含んだ複雑な気持ちで、フィーネは
伯爵の言葉を待った。
「実は、昨夜のことを黙っていてほしいんだ」
「昨夜のこと」
「僕とクリスティーナ嬢との逢引」
そう言ってブランドン伯爵は、軽く片目をつぶってみせた。
ああ、そういうこと......。
「いずれはみんなに知れることになるだろうけど、今はまだ
秘密にしておきたい」
「ええ」
「クリスティーナ嬢の気持ちをすべて掴んだとは言い切れないから」
なるほどと納得すれば、さっきまでの浮き立つような気持ちはすっと
しぼんでいった。