甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 フィーネが下着とペチコートだけになったのを見透かしたように
 カーテンの隙間から入ってきたのは、中年の婦人だった。

 てきぱきと採寸をする彼女に、ここは婦人物もあつかうのですか
 と問いかけたが、返事はかえってこず、採寸を終え、服を着てカーテンの後ろ
 からでると、ユアンは店の主人とカタログらしきものを見ていた。

 出てきたフィーネに気づき、パタンとカタログをとじる。

 フィーネになにも説明する気はないらしく


   「いつ頃、仕上がるかな」


 と、聞き、店主が ”四日後には” と答えると、ユアンは満足そうに
 頷いた。

このときの採寸がなんだったのか、フィーネが知ることになったのは
 四日後。



 〜*〜 〜*〜   



   
    「これ...... なに?」


 目の前のダイニングテーブルの上に広げられた数着の上品なドレスを見て
 フィーネは、戸惑った。

 どれもこれも、上等な美しい布地でセンス良く作られた、上流貴族の
 女性が着るようなドレスばかりだ。

 ドレスに合わせて、レースの付いた小ぶりの帽子に、華奢なヒールの靴、
 ドレスの共布でつくられたビーズ飾りのついたバックもある。

 美しく広げられたテーブルの傍で、にやりと片頬を歪めて笑っているのは
 ユアン、そしてその後ろには、両手を組んで憮然とした顔をしたバーバラが
 壁にもたれるようして立っていた。


   「君のために用意したものだよ」


 は?

 ユアンの言っている意味がわからない。


   「これから君にちょっとした魔法をかける。君はだまって
    言う通りにしてればいい」


 そう言って、ユアンはバーバラのほうを振りかえった。

 ユアンに促され、面倒くさそうに壁から身体をおこしたバーバラは
 不機嫌な顔のままフィーネに近づいてくる。


   「私は、気が進まないんだけどね」


 そう言いながら、むんずとフィーネの腕を掴んだバーバラは
 すっかり怯えて縮こまっているフィーネを引きずって、浴室に向かって
 歩きだした。
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