甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 家に帰りつき目を覚ましたユアンは、後で話を聞くと言ったことを
 忘れてしまったかのように、足早に自分の部屋へ向かうから、
 フィーネも早足でその後を追う。

 部屋にはいり、フォロックコートを脱ぎかけている背中にフィーネは
 問いかけた。



   「なぜ、こんなことをするの、どうして工房の人たちを助けよう
    としているの?」



 コートの脱ぎ、ソファの背にぱさりとかけると、ユアンは屈託のない
 笑顔をみせた。




   「やり手のゴードン氏は、工房の拡大を狙って郊外の土地に
    目をつけたが、それがたまたまここだった。
    彼にここを買い取られると困るから、僕は彼と工房を
    切り離すことにした。」



 成る程、ユアンにはユアンなりの事情があるのだ。



   「それに君も嬉しいだろ、横暴なゴードンから工房が自由に
    なれば、アルンも喜ぶ」

   「それはそうだけど...... だからってこんなやり方......」

   「こんな_?」

   「嘘がばれたらどうするの、それでもし工房の人たちに迷惑が
    かかったら」

   「そんな心配は必要ないよ」

   「心配よ!だって私たち法を犯そうとしてるんですもの」



 すっと、ユアンの顔から表情が消えたが、俯いていたフィーネは
 気づかなかった。

 危険なことに足を突っ込もうとしている、とフィーネは思う。

 それは先ほどの馬車の中での感情をも呼び寄せた。

 このままユアンのいう通りには、できない。

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