甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
私ったら、なにを言っているのかしら!
自分の言葉に驚きながらも、本当に言わなければいけないことは
まだ他にあるような気がした。
自分の靴先を見つめ、両手をしっかりと握りしめる。
「それに! 私.....! あなたのこと怖くないわ!」
「......」
「......」
「......」
返事はかえってこなかった。
それどころか、部屋の中に自分一人になってしまったかと思うほど
ユアンの気配すらなくなってフィーネが、恐る恐る目線をあげれば
鏡越しに、ユアンと目があった。
ユアンはタイを結ぶ手を途中でとめたまま、じっとフィーネを見ている。
いつもの冷めた表情と違うと感じるのは、唖然としたというように、
うっすらとユアンの口が開いているから。
でも、ユアンはなにも言わない。
「......」
「......」
沈黙に耐えきれなくなったフィーネはうろうろと視線を彷徨わすと、
「言いたかったことは......それだけよ」
と独り言のように呟いて、くるっと身体の向きを変えるとドアに向かった。