【短】エイプリルフールは別れの日
「あの、落としましたよ」
動き出した電車の中。
私のそばでしゃがむ男性がいた。よく見ればネックレス。
どうやら、留め具が壊れて落ちたみたい。
「すみません。ありがとうございます」
「いえ。これは大事なものなんですか? ブランドだけど、随分前のシリーズですね」
「詳しいんですね。友人からの贈り物なんです」
嘘。
本当はエイジから貰った。瑠美が選んだプレゼント。
「じゃあ、大事になさってくださいね」
「ありがとうございます」
お礼を言うと、彼はみるみる赤くなっていく。