夢みるHappy marriage
「あのデブで弱々しい正吾が、こんな立派になって」
「なんだよ、母親みたいだな」
「私も頑張らなきゃ」
「もうそれで完成形じゃないの?」
「見た目だけじゃだめ、私の一番の目的は誰もが羨む金持ちとの結婚だから」
「なんだ、それなら俺がもらってやるよ」
「本当っ?って、どうせ冗談でしょ?私は本気なの、来月から無職になっちゃうから今は婚活より職探し本気でやんなきゃなんだけど」
「なんで?この会社は?」
「元々派遣社員だったんだけど、突然契約切られちゃって」
「貯金あんの?次の仕事だって決まってないだろうに、いきなり収入なくなるなんて困るだろ。そうだ俺が全部面倒見てやるから、前みたいに一緒に住もう」
そう言ってぎゅっと手を握られた。
私は私の人生を歩む、そう決心した矢先また誰かに頼るのはと心が揺らぐ中、そんな正吾の申し出を断るかのように、突然誰かの手によってその手を振り払われた。
「必要ない、今俺んちで雇ってるから」
「おぉ、慧人、ただいま」
「おかえり」
「で、何雇ってるって?」
そう聞く正吾に、私達の関係を知られたくなくて慌てて会話を遮った。
「な、なんでもない。余計なこと言わないでよ」
「本当のことだろう、こいつは俺と住んでるからお前の助けは必要ない」
なんで、この人はことあるごとに人の邪魔をするんだろうか。
せっかくの正吾との再会を台無しにされてしまう。
なぜか正吾に対して敵意剥き出しの榊原さんにムッとしていると、タイミング良く彼に進行役の社員から声がかかった。
「榊原さん、すいません一言もらっても良いですか?」
「あ、はい」
心の中でしっしっと、言いながら彼を追い払う。
そんな私を横目で見ながら、驚いたように正吾が言った。
「……マジで一緒に住んでんの?よくあんな奴と住めるな」
お互い嫌い合っているのだろうか?そんなに嫌そうな顔をする程、榊原さんは悪い人じゃないと思うんだけど。
「た、確かに超低血圧でめんどくさいけど、そこまでじゃ」
「知らないのかよ、慧人の本性。そんな低血圧なんて可愛いもんじゃない」
「……本性?」
「早く離れた方が良い」
「なんで?」
本性って何?
そんなに真剣な顔をして言われたら、気になってしょうがない。
私達の会話を遮るように、榊原さんのスピーチが始まった。