夢みるHappy marriage


やっと到着したエレベーター。
その扉が開いた瞬間、目の前の人物に思わず、うっと顔をしかめた。


「You again. Long time to see.」

そこには憎き奴の姿が。

「……っ!?」

「悪いね、あまり英語は得意な方じゃなくて聞き取れなかったかな?この前の返事これで合ってる?」

「い、嫌味ですか?」

「いや、この間の桜井さんの発音は感服したよ。どこで英語を習ってるの?」

「……銀座一丁目のとこの」

「そうか、うちの社員には結構ビジネス英語習っている人多くてね。そこは利用しないように言っておかなきゃ」

「本当、嫌味ですか?てか勘弁してください、一体なんの嫌がらせですか?なんでわざわざ私のこと指名したんですか?」

「嫌がらせ?ただ、顔見知りの方が良いと思っただけだよ」

「私、正直言ってあなたのこと嫌いなんですけど」

「気が合うな、俺もだ。お互い嫌い合っているもの同士仲良くやっていこう」

そう言って握手を求められるが、当然それに応じるはずもなく、ただ目の前の人物を睨み付けた。

「言っている意味が分かりません」

「早速だけど、お店案内してくれる?」

「嫌ですよ、私もう仕事終わりですから。派遣はね残業代が支払われないので、残業できないんです」

「じゃ、その残業代はこっちで支払おう」

なかなか強引な相手だけど、私も引き下がらない。

「私、婚活に人生賭けてるって言いましたよね?定時上がりが基本、私アフターファイブは忙しいんです」

「は?」

私はバッグの中からスケジュール帳を出して今月の予定のページを見てもらう。

月曜日はお料理教室
火曜日は痩身、フェイシャルエステ
水曜日はまつ毛パーマ
木曜日はネイルサロン
金曜日は美容室

この通り、私の一週間はぎっしり埋まってしまっている。その他にも、英語のレッスンやヘッドスパだって行きたい。
このスケジュール帳にある意味感服したのか、唖然としている社長さん。

「……本当なめくさってんな。潔過ぎて逆に関心するわ」

「えぇ仕事なんてプライベートの二の次ですから。今日はこれからエステなので失礼します。バディの件ももう丁重にお断りさせて頂いているので」

「だめだ、全部キャンセルしろ。期間中は、こっちに本腰入れろ」

「は……?ちょっと待って、あなたにそこまで決められる権利ないでしょう?」

「これからはこっちにも、うちの社員が出入りするようになる。年収1000万は下らない上物揃いだ。玉の輿狙った婚活にはもってこいだろ?」

「……っ!」


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