夢みるHappy marriage
「で、肝心のシェフは?スタッフはもう集められてるのか?」
「そ、そこまでは私も把握してません。そもそも、この話にほとんど関わってなかったし」
言い淀む私。そこに、ちょうど社長様の携帯が鳴った。
「……あぁ、今店にいる。なんでって、別にいいだろ。そっちはお前と環に任せてんだろうが。俺も明日はそっちに合流するから」
……話している相手って社員さん?
それも社長様と同じ位の立場で物事を言える人間らしい。
なんだろう、会話の内容的になんで社長が直接出向いてるんだって言われてるようだけど。しばらく耳をすましてその会話を聞いていると、不意に店の扉が開いた。
社長様と同じ位身長がある、これまた、くっそ高そうなスーツを着た男の人。しかも社長とはまた違うタイプのイケメン。その出で立ちから社長様の仲間ってことがすぐ分かった。今話していた人物もこの人だろう、携帯を耳に当てたまま、茶目っ気たっぷりに片手をあげてこう言った。
「来ちゃった」
「は?何してんの?」
「いやヒヤリング思いのほか早く終わっちゃってさ、今皆会社戻ってミーティングしてる」
「お前は?」
「社長の様子見に来た」
「さぼってんじゃねぇよ」
「いやいやだって、いきなりこんなショボい案件引き受けたと思ったら、社長自ら出向いちゃうし気になるじゃん?」
「ショボい?」
思わずその言葉に聞き返してしまう私。
うちの案件がショボいってどういうこと?
「あ、ごめんね、そちらの社員さん?」
「あぁ、うちとのバディ頼んでる桜井」
そう言われ改めて自己紹介する。
「はい、桜井彩奈といいます、よろしくお願いします」
「そうなんだ、俺多分こっちにはあんま関わんないけどよろしく」
笑顔でそう言われ名刺を渡される。そこには、片桐 凌眞、副社長と記されていた。
なるほど、こちら様はナンバー2であらせられましたか。年齢は社長様と変わらない位というか、二人の雰囲気はなんだか友達っぽい。きっと6畳から会社を始めたっている創立メンバーの一人なんだろう。
「あのショボいってどういうことですか?」
「あぁ、ごめんね。でも、うちは最低でも月500万、1000万の単価で動くからさ。正直こういう、エリア戦略とか店舗拡大戦略とかやんないんだよね。顧客側が費用払えないから。しかも飲食店とか専門外なのに」
「もう、お前うるさいから帰れ」
「何か思い入れがあるの?」