夢みるHappy marriage
まぁ、仕事適当人間の私に人様のことをとやかく言う資格はないのだけれど。
だけど男の人の怒るような声をずっと聞いていると気分が悪くなってきた。
まるで、昔のあいつを思い出させられる。
頭の中で少し蘇える光景。いつも気分が悪くなるだけだから、思い出さないようにしているのに。
クズアキのせいで奴を彷彿とさせられてしまう。
……あ、やばい。めまいがするかも。
ふらっと足がふらついたところで、察したちーちゃんが駆け寄ってきてくれた。
「桜井さん、大丈夫ですかっ?」
「ごめんね、ちょっと気分悪くて」
そんな私に気付いた大天使様、中川課長が助け舟を出してくれた。
「桜井さん大丈夫?今日はもうこのまま帰って良いよ」
その言葉に甘えて、オフィスを後にする私。去り際、クズアキと誰かが私について話している内容が耳に入ってくる。
「あの子もうダメでしょう?基本、定時にすぐ帰っていくし、やる気ないし。上の人も次の契約は更新しないって言ってましたよ」
「今からでもバディ変えてもらったら?荷が重いんじゃない」
「いや、でも相手先の社長と知り合いだったみたいで、直々のご指名なんだよ」
「えぇっ?」
……あぁ、気分が悪い。
だから私がバディなんて無理なんだってば。
すると、心配してくれていたのか後ろからちーちゃんがついてきてくれた。
「あ、あの、野村さんの言うことは気にしないでください。桜井さんの、派遣っていう自分のプライベートも大事にできる働き方を羨ましがってるだけなので」
「あはは。あの人、人のことやる気ないって言う前に、自分だってやる気ないもんね」
「はい、だけど男はそれでも仕事頑張らなきゃいけない風潮だからって、尚更、桜井さんが羨ましいみたいで」
「……ねぇあの人と付き合って疲れない?」
「えっ、あ、はい、こんな私と付き合ってくれる人いませんから」
そう言って照れるように笑うちーちゃん。あいつでそんな顔ができるなんて、どんだけ良心の塊というか。男の見る目がないというか。