夢みるHappy marriage
その片桐の発言を皮切りに、奥森が声を荒げて反抗した。
「容赦ないって、トークストレートって散々教育してきたのはあなたじゃないですか!」
「そうだっけ?」
と、とぼける片桐に更にまくしたてる。
「私や卓哉がどれだけそれでギャン詰めされて泣いたことか!私はああいうちょっとウジウジした子苦手ですっ」
「あー、学校とか一緒だったら、お前真っ先にいじめてそう」
あー、と俺も同調するような声を上げると、慌て出した奥森。
「そんなことしませんよっ」
そんな話をしながら透明な壁に区切られた部屋で待っていると、やっとこちらへ桜井達がやって来た。
不意に片桐がこちらへ向かってくる、桜井を顎で指して言う。
「あの子は?」
「うーん……65」
「結構いったね」
「あの茶髪のゆる巻きといい、男ウケ狙った恰好が鼻につきますね」
「お前のその自称デキル女風ルックも相当鼻につくぞ。環、意識してんだか知んねぇけど」
よくぞ言ったと吹き出し、奥森に尋ねる。
「その点数さ、何基準な訳?」
「私基準ですよ、ちなみに私は75点です」
75点という自分の評価の甘さに、奥森の「さぞ当然、妥当の点数」という誇らしげな顔を二人で無心で見つめた。
「環は?」
「環先輩になんておこがましくて点数付けられませんっ」
部屋に入って来たプロジェクトリーダーとサブの男二人、そして桜井に一斉に口を噤み立ち上がる。
よろしくお願いしますと、互いに頭を下げ軽く自己紹介をする。今回のプロジェクトのリーダーを人の良さそうな顔をした中川さん、そしてサブを野村といういかにもプライドの高そうな男が務めるらしい。
桜井も昨日ぶりに顔を合わせる。その顔からは、めんどくさいことに巻き込みやがって、というセリフが滲み出てくるよう。
うちのスタッフ目当てに婚活を、なんて云々かんぬん言って無理矢理組み込ませたが、残念ながら片桐のせいでこちら側のスタッフはほぼ固定されてしまった。
彼女を騙したみたいで申し訳ないがしょうがない。