夢みるHappy marriage
先にそんな奥森を帰した後、こっそりそそくさと自分のデスクで帰り支度に入っている桜井に声をかけた。
「桜井、ちょっと話があるんだけど」
「え?何ですか?」
そう言って時間を気にしているのか腕時計をチラ見する。
「何か用事があるのか?」
せわしそうな桜井にふと思い出した。……そうだったこいつは、時間があればエステ、美容室、ネイルサロンと予約を入れる美容オタクだった。
「うん、もう行かなきゃ。これからね、ちーちゃんと大事な用事があるから」
「大事な用事って何だよ?」
「秘密です」
茶目っ気たっぷりに、口元に人差し指を立ててそう言う。やけに上機嫌な桜井。怪しさ満点で、彼女が去った後、こっそりちーちゃんをひっつかまえて聞き出した。
ちーちゃんはいきなりそんなことを聞いてくる俺に不審がることなく、サラサラと今日のこれからの予定について教えてくれた。
「白坂さん、ありがとう。俺と今話したこと桜井さんには秘密だよ?」
「はい?よく分からないけど、分かりました」
にこっと微笑みながらそう言うと、ちーちゃんも不思議そうにしながらも、にこっと笑って了承した。
あいつは、この前のホテルの一件のことなんて忘れてしまったのだろうか。俺にあんな顔をしておきなら、未だに金に執着しているのか。本気で金から愛情が生まれるとでも思ってるのだろうか。
どうにも邪魔してやりたくなって、相棒に電話した。
「……あぁ、凌眞?」
『何?今日のことでお説教?ちゃんと反省してるよ』
「それよりも、これから、ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけど」