夢みるHappy marriage
キス以上のことって?
そうしてホテルの地下駐車場へ行き、社長様のSクラスの黒ベンツで出発。
連れてこられた先は、恵比寿の繁華街からは少し離れた隠れ家っチックなお店。
街路から入り口まで少し距離があり、敷かれた飛び石で繋がっている。
入口の両隣には提灯があり、ぼんやり暖かい光が周りを照らしている。
暗くてよく見えなかったが涼し気な水音の元を探ると、奥には立派そうな日本庭園のようなものが見えた。
引き戸を開けると、そこには着物姿の上品な老婦人が出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、榊原様」
そう言って丁寧にお辞儀をして迎え入れてくれる。
「いつもの部屋空いてますか?」
「はい、どうぞこちらへ」
あの水音の正体は、あのよく立派な日本庭園にあるカコーンってやつだった。
それを真正面から見れるお部屋で、丸い窓から品良くライトアップされた日本庭園が覗けた。
「あれ、なんていうんだっけ」
「ししおどし?」
「そう、それっ」
畳の匂いがする和室、木製の大きなテーブルを挟んで二人向かい合って座る。
「日本酒いける?」
「もちろん」
「何が良い?」
「飲みやすいのが良いなぁ、ちょっと甘くてお水みたいに飲めちゃうやつ」
「十四代は?」
「え?あのくっそ高いやつ?良いの?」
「何、今更遠慮してんだよ」
「いや、私の貧乏舌には勿体ないかと」
その後、さっきの女将さんがやってきて、言っていた通り、ウニの肉巻き軍艦といくらのこぼれ丼を頼んでくれた。それと、大トロの握り寿司とその他は適当におまかせで、と。
大好きなものばかりで、料理が来る前から、私の口の中ではもう唾液が出始めている。
そして、待ちに待ったウニの肉巻き軍艦のご登場。
厚い生の霜降り牛が贅沢に新鮮な雲丹を囲んでいる。
一口でギリギリいけるかっていう贅沢なボリューム。
雲丹の上にちょこんとセレブの象徴金箔がきらめいてる。
「……食べないのか?」
じっとこの神々しい食べ物を見つめる私に、空気を読めない榊原さんが口を出す。
「いいの、今、頭で味わってるから」
「そんなに気に入ったなら、もう一つ頼むか?」
「いいの、邪魔しないでっ」