夢みるHappy marriage

あなたにとって私って何?

そんなこんなで始まった同居生活。

早速私は、なんとか族で超有名な高級タワーマンションに引っ越していた。

窓からはこの前ホテルで見たような、贅沢過ぎる景色が望めた。

もういちいち驚かなくなってきたけど。
なんとなく予想できてたし。

なんでこんな人に目をつけられてしまったのか。

私はこの人に関わるようになって、どんどん肥えさせられている気がする。


約束通り彼と毎晩一緒のベッドで寝ていた。
けど、あのお店での一件以来、私の体に触ってくることはなかった。

ただ、ただ、彼の腕の中でくっついて寝た。

朝、5時にその腕の中から這い出ると、シャワーを浴びて自分の支度を終わらせてから朝ごはんを作りにかかる。
本当は、私も働いている身だから作らなくて良いと言われていたが、お金をもらってる以上そういう訳にもいかず、毎日かかさず準備していた。

正直、料理はそこまで得意じゃない。だけど、セレブな新妻気分が味わえてなかなか楽しくやっている。オシャレなエプロンも買ったし。やっぱりどこかの誰か分からない人のために働くより、こうやって誰かのために家事をしていた方が自分に合っている。

料理、掃除、洗濯、決して苦痛ではなかった。
そう、彼を起こすこの手間を除けば、


「榊原さん、榊原さん、起きてください。会社に遅れますよ」

そう言って真っ白な布団をかぶった榊原さんの体を揺らす。

もう何度彼を起こしに来たか分からない。
私もあの彫刻風美女のように蹴飛ばせたらいいのだけど、さすがに雇用主に向けてそんなことはできなかった。


「本当、どんだけ寝起き悪いのっ」

白くデカい芋虫に何度ぶつけたか分からないセリフ。


「もうっ!」

そうやって、体を一層強く揺さぶると「んっ」と初めて彼が反応を示した。


「あ、起きた。朝ごはんできてるよ?」

起きたことが嬉しくて、彼の顔を覗いてそう言って微笑む。


「ん」

短い返事のみ、そしてまた静かな寝息をたて始める。


「……はぁ?ちょっと、寝ないでっ」

毎朝毎朝、この超低血圧な生き物と戦ってきたおかげで私にも少しずつ免疫が付き始めていた。

布団をひっぺがして、無理矢理でかい体を起こし、

「もうっ、起きて、しゃきっとしてよ!」

「目ぇ開けてっ!」

最終手段というばかりに、彼の目を無理やり手でこじ開ける。


「ん、んー……」

それでも起きない彼に、今度は何をしてやろうか企んでいたら、そのまま布団の中に引きづり込まれた。


「な、なんでっ!」


すっぽり彼の腕の中。


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