夢みるHappy marriage
しかし、朝の彼の一挙一動は目が離せない。特に朝食の時は、今もパンの間からスモークサーモンが落ちそうになっていてすかさず声をかけた。
「ちょっとシャツ汚れちゃう。気をつけて食べて」
「ん」
コーヒーを飲むマグカップを持つ手も怪しいため油断できない。
「しっかり目開けてコーヒーこぼすよ」
「ん」
……本当、何なのこの超低血圧な生き物は。
まだ船こいでるし、さっきから、ん、しか言わないし。
まぁいつものことなんだけど。
でも、なんかちょっと可愛いかも。
決して彼の面倒を見ることは苦痛ではなかった。
いつも何かと上から目線で偉そうな彼からは想像しがたい姿だったから。
「今日夜ごはんいる?」
「……あれ、」
「あ、携帯か。はい」
そう思い出して、彼の携帯を渡す。
スケジュールは全て携帯で管理しているようだった。
「今日はいらない。意外と気がきくな、お前」
コーヒーを飲んでやっと目覚めてきたのか、ん、以外の言葉を話し始めた。
「一緒にいたら誰でもこうなるよ。いつもどうやって起きての」
「田口さんが休みの日は、社員に連れ去られるように会社に行ってた。一度だけ気がついたら会議中だったことがあって、びっくりするようなピンク色のネクタイしてて一気に目が覚めた」
その光景を思い浮かべて、思わず吹き出す。
「ピンクって恐ろしく似合わないね」
「卓哉って奴で、憎めない奴なんだけどさ」
「ねぇ、榊原さんって私が作った料理なんでも残さず食べるけど、もっとこういう味付けが良いとかないの?」
一人暮らしはそれなりに長いけど、私が作る料理といえば簡単な貧乏飯か、低たんぱく低脂肪なダイエット食に限られていた。だけど、そんな質素な料理を榊原さんに出す訳にもいかず私なりに頑張って作ってはいたものの、毎回いつも何も言わずたいらげる彼に聞きたかったことだった。
「別にないよ、人が作ったものならなんでも良い。普段外食ばっかだから。でも、チアシード?あれはだめだ」
「チアシードは体に良いんだよ?」
「見た目が食べ物じゃないだろ。よく小さな頃田んぼで見たカエ、
「だめっ、それ以上言わないでっ。食べれなくなる!」
「何ださすが米どころの東北出身、俺と思ってたこと一緒じゃん」
「もう最悪、これから食べらなくなったら恨んでやる」