夢みるHappy marriage


「あんな見た目でうまい訳でも腹膨れる訳でもないんだからいいだろ」

「それが、お腹膨れるの。あれが水分含むと3倍に膨れ上がってお腹いっぱいになるんだから」

「あんなんで腹満たす位なら、普通に米か肉が食べたい」

「そのご飯とか肉を我慢するためにチアシードを飲むんだよ」

そう言うとすごく驚いたような顔をして、真顔で聞いてきた。


「……なんのために?」

「ダイエットに決まってるでしょう!」


一際大きな声でそう言うと、何がおかしいのか笑いだす目の前の人物。

この人はダイエットだとか減量だとか考えたこともないのだろう。
その程良く引き締まった体だって、頑張ってプロテイン飲んでますとかササミ肉しか食べてません、とかいって作られたものじゃないだろうし。

羨ましいと思いながら、立派なミキサーで作ったバナナと豆乳のスムージーを飲む。

だけど、こうやって気を遣わず他愛のない話をするのは楽しかった。
時々二人で声を上げて笑ったり、それは違うって口論になったり。

ずっと一人暮らしだったし。そういえば家族以外の誰かと一緒に住むなんて初めてかもしれない。
相手が榊原さんだからかもしれないけど、今のところストレスなくやっていけてる。
むしろ、この共同生活が楽しい位。

……そりゃそうか、だって、東京の中心にある超高層マンションの一室に住めるんだもの。
ふと外に目を向ける。雲一つない晴天、水色の空がどこまでも澄んで見え、景色も遠くまで見渡せた。まるで、ここから東京の全てが見渡せるよう。

成功者だけが得られる景色ってこういうものなのだと思った。

部屋が広くて窓も大きくて、この部屋には太陽の光がよく入る。

こんなに清々しい景色の前でなぜか少し寂しい気分になる。
やっぱり、この景色は私には少し眩しい。

お互いの顔が良く見えるのはすごく良いけど。


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