夢みるHappy marriage
榊原さんと仕事をするのも、もう終わり。
同じ頃に私の契約期間も終了する。
なんとなくだけどこの仕事が終わったらそのまま切られそうな予感がしてた。
別にうちの部署に人手が足りないっていう訳でもなさそうだし、私があそこでできる仕事はお茶くみかコピー取りか、それと簡単な小間使いと、あとは榊原さんの言い分をオブラートに包んで社員さんに伝える位。
本当それ位しかない。
パソコンが得意な訳でも特別な資格がある訳でもない。
社会にとって自分の価値なんてそんなもの。
後から聞いた話だと、あの奥森さんという人は、国立大の英文科出身で三カ国語話せるらしい。
あんなに綺麗なのに、それに加えて頭も良いなんて。
私なんてここ数年何してきた?
結婚ばかり重視して相手も決まっていないのに、将来のために料理教室だとか、もしもの時の海外出張のために英会話教室だとか。
あとはひたすら自分の容姿を磨くことに専念して、結果得られたものは何もなかった。
もう少しで誕生日が来て、私も28になる。
市場価値はどんどん下がっていく中、本当にギリギリの年齢にきている。
だから今、本当は榊原さんの気まぐれに振り回されている場合じゃなかった。
それでも彼の周りはいつもキラキラしていて、私が欲する全てのものがそこにあって……、惹かれざるをえなかった。
彼の気まぐれが終わったら、また婚活に就活に励めばいい。
それまでは彼のそばで一生分の夢を見よう。