夢みるHappy marriage
クラブの入り口は白と黒を基調としたモダンな造りになっていた。
トレーニングウェア上下、タオル、シューズ、フィットネス水着もろもろ借りたけど……、野口さんが何枚か飛んでいってしまった。今度から絶対、持参しよう。
ジムでは、なんだかエレガントな雰囲気漂う紳士淑女様達が数人いて爽やかな汗を流していた。やっぱり私の存在はちょっと場違いな感じ。
誰も私のことなんて気にしてないのに勝手にアウェー感を抱きながら、最新式の液晶画面がついたランニングマシンで走り始めた。
そう、私はダイエットのために来たんだから。音楽を聴きながら、ひと汗かいて少し休んでまた走ってを繰り返した。ランニングの後は、シャワーを浴びてプールへ。
クールダウンもかねて、次は水泳。
フィットネス水着に着替え、まずはウォーキング。
1ターン往復すると隣のレーンで休憩中なのか、歩いている男性とちょうど並んで声をかけられた。
「こんにちは、泳がないんですか?」
「今ジムで少し走って来たところなので、もう少ししたら泳ごうかと」
「このホテルに泊まってるの?」
「いえ、あの知り合いが会員で」
「へー、もしかしてここに住んでるとか?」
「あ、はい」
「僕もここに住んでるんだけど、独身者には本当便利だよ。君も休日なのにえらいね、若いのに健康的で素晴らしい」
「いえいえ、健康というよりダイエットで」
「えー、細い細い。十分可愛いじゃない」
そう言ってちらっと、私の体に目が向く。
「いえいえ」
褒められて悪い気はしなくて、謙遜しながら照れると、後ろからわざとらしい咳払いが聞こえた。
それに振り返ると、そこにはなぜか榊原さんの姿が。
「あぁごめんね、かっこいい旦那さんと一緒だったか」
誤解されてしまいすぐに否定しようとすると、それを遮って榊原さんがよそ行きの笑顔で挨拶をした。
「こんにちは」
敵意たっぷりの笑顔に、顔をひきつらせずにはいられない。
「こ、この人は旦那さんじゃ、」
「絢奈、少し休んだら?」
改めて、笑顔で誤解を解こうとしたら榊原さんにまたもや邪魔されてしまう。
促されるまま、プールサイドのデッキチェアに。