夢みるHappy marriage
「……期待外れ?」
「あぁ、あのまっすぐに強い瞳をした女の子が、まさかこんな美容モンスターに成長してるとは思わなかった。だけど、会社を興して、何かに迷ったり躓いたりした時はよくお前のことを思い出していたよ。そして、何事も無気力で諦め癖のついていた俺を奮い立たせてくれた」
「ねぇ、あの時より格段に綺麗になったでしょう?」
「……そうだな。でも、俺はやっぱりかける言葉を間違えたんだと思う。ちゃんとそのままでいいよって、変に焚きつけたりせず、そう言ってあげれば良かったって」
「なんでそう思うの?あのままだったら私は不幸だった。榊原さんがあの時、あぁ言ってくれたから、私はここまで頑張れたのに。あの日から、生まれ変わったように生きてきて今の私がいるのに」
「じゃ今幸せなのか?俺には随分生きづらそうに見えるけど」
「幸せだよ」
幸せだよ、そう自分で言い切っといて、心の中でどうしても?が付きまとう。
いや、絶対あの頃に比べたら私は幸せなはず、男の子に女の子扱いされるようになったし、オシャレやお化粧が楽しいし。
なのに、なんだろうか、このモヤモヤは。
「自分の美に縋るなんて、そんなもの一時のものでやがて衰えていくんだから。そんなものより自分の身になる技術や知識を、より深く多く身に着けていた方がずっと有意義だと思うんだけど」
「……そうだね、その点、社長さんの周りにいる人は皆キラキラしてるもんね。西篠さんも、奥森さんも。私には何もないけど」
「これからなんだってできるだろ、それだけの負けず嫌いなんだから。生き方なんていくらでも変えられる。」
「……なんで、今の私を否定するの?私、頑張って綺麗になったのに」
「否定してる訳じゃない。ただ、そこまで自分の容姿に執着するなって言いたいんだよ。そういうのが極端なダイエットに繋がるなら、あのままで良かったと思われてもしょうがないだろ」
「極端なダイエット?どこが?私が20kg落として時の方がもっと壮絶だったよ?聞きたい?」
「お前には思い入れもあるし、ちゃんと良い大人の女になって、まともな恋愛をして良い男と結婚して欲しいんだよ」