夢みるHappy marriage
そしてやってきたレセプションパーティー。
この日に選んだのは花柄のワンピースドレスだった。シャンパングラスを片手に得意の作り笑いで招待客をもてなす。隣にはちぃちゃんも一緒だった。片桐さんに構われるようになってから見違えるように垢抜けた彼女は、今日はタイトスカートを履いていた。以前だったら絶対履かなかっただろうに。
目線の先には、忙しそうな榊原さんと片桐さんがいた。
嬉しいことに、ずっと誰かしらに捕まっているおかげで声をかけられずに済んでいる。
粛々と自分の役目に徹しているところ、黒いパーティドレスにジャケットを羽織った猫目の女が近寄って来た。
「素敵なドレスですね、黒がよく似合います」
「ありがとうございます」
お互いにお互いが嫌いだと目で言っているような私達。
そこの間にいるちぃちゃんには申し訳ないが、多分私達本質が似ている。
「そのワンピースドレスも随分可愛らしいですね、私にはとてもじゃないけど着こなせない」
なんだか、20代後半にその花柄ドレスは痛々しい、と聞こえるのは私だけだろうか。
そんなの似合ってれば問題ない、愛想笑い一つ上手にできないあなたには絶対に似合わないだろうけど。
その嫌味ににこっと微笑み返して聞き流すと、遅れてあの彫刻美女が店に登場した。
薄緑色のスレンダーな体のラインに沿ったシンプルなドレス。その隣には部下の男の子を連れて。
ちらっと皆が目線をそこに奪われる。
この神々しい女神様には両手をあげて完敗宣言せざるをえない。元々持っている素材が違い過ぎる。
……そして、やっぱりこの人だと思った。
奥森さんが言う榊原さんを想っている人というのは。
榊原さんを見つけるなりその隣に行った。
そこが自分の定位置だとでもいうように。
だけど、彼の隣が一番しっくりくる。
悔しいけど、そう思ってしまった。