ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
救急に電話してしまうと、まずは戸締まり……そして火の用心。


オロオロしてるリンの横でテキパキと準備を整える。


そして、イサキのおばさんにも電話を入れた。


「シンラです。

お世話になります。

……ええ、それが。

俺が店に着いたら、ちょうど配達に出てて。

出先で頭が痛いってうずくまってしまったそうで。

保育師さんが連れて来てくれたんだけど、今から救急車で病院行ってきます。

……はい、はい、ウェスター国立中央病院の方に。

……はい、すいません、お店の方は……はい、本当すいません。

リンも一緒に行きます。

ご迷惑おかけします。

はい、失礼します」


リンは母親と自分を交互に見ていた。


「リン、保険証!

それとある程度お金、準備しとけ。

あと、何か持病あるならその薬とか。

さっき心臓がどうとか言ってただろ?

救急車来る前に、早く!」


「は、はいっ」


リンは慌てて店の奥から母屋に向けて走って行った。


代わって自分が母親につく。


「……何やってんだよ……何やってたんだか、もう……!」


思わず漏れた言葉だけど、自分に言ったのか母親に向けてだったのか、自分ながらに分からなかった。


目の前の母親の呼吸が荒い。


顔色が異常なまでに悪い。


……なんで、こんなことに、なんで、ようやく……ようやく会いに来たってのに?


救急車のサイレンが近づいて来た。


リンも準備を整えたらしく戻ってきた。


救急隊は母親を担架で運び、病院に移送するから家族は救急車に同乗するように、と言った。


「分かりました。

俺、息子です。

こっちが妹。

……母を、お願いします」


リンが驚いてこっちを見たのは知ってはいたけど、流した。


だから、四の五の言ってる場合じゃなかったんだ、そういうことで。


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