ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
世間様に浮気女と蔑まれたって、シンラ、貴方に恨まれたって構わない。


だけど、生前のダイさんを、ダイさんの死についてを人様に悪く言われることだけは嫌。


ダイさんが、残された母さんの為にしてくれたこのことは、墓場まで持っていこうと決めました。


……決めてたのに。


さっき夢で会ったシンラが、6歳のままじゃない18歳の貴方が、その笑い方が、あまりにもダイさんに似てたから……


勿論、彼と結ばれてしまったことは事実だし、母親失格なことは分かっています。


だけど、ただ、貴方に会えたことが嬉しかった。


そしたら聞いて欲しくなった。


聞いたうえで何かして欲しい訳じゃない、ただ、聞いて欲しい。


きっと、今の貴方なら……ダイさんの気持ちも、母さんの気持ちも分かってくれる、そう思った。


だって貴方は、ダイさんと母さんの……自慢の息子だから。


そうそう。


ダイさんは手紙の中で、貴方との約束……いつか貴方に自力で追いつく、という誓いを。


守れなくて本当にすまないと思っている、と。


気にしてましたよ。


全く、あのダイさんは……シンラと母さんと、リンの父親の彼とで。


新しい家庭を築いていくように、それが自分の願いだ、なんて。


淡々と語ってたけど。


母さん、そこら辺については聞く耳を持ってなかったから。


結局、リンと二人三脚でなんとかやってきました。


だけど、母さんの心の中には、いつだってダイさんとシンラがいたんです。


だから、頑張ってこれた。


本当に、心から感謝の気持ちを込めて……


ありがとう。




*****


モモが息を呑んだ。


それを見てから、一度目を伏せて。


自分の胸の内を語りだす。


「……俺、な……それ読んだ時。

急に目の前が真っ白んなってさ。

膝がガクンってきて。

リンが遠くで呼んでる気がしたけど、立ってられなくて。

そのままぶっ倒れたみてえなんだよ。

リンなんか洒落になんねえよ、母さんは死にかけだわ、義理の兄貴はぶっ倒れるわ……」


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