ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
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「だーかーらー、ごめんって!

わざとじゃないわよ!」


「ア~カ~ネ~……てめえ、ついうっかりにもほどがあるぜ!

足下くらいよく見ろよ!」


「わざとじゃないってんでしょ!

しょうがないじゃない、トイレ行きたくなったんだもん!」


「……まあまあ。

あれだけ派手にけっつまずいて、豪快にすってーんといかれたわりに、アカネ本人は無傷で何よりです。

ただ、私のびっくりどっきり収集君は、不能になりましたけどね」


「もー……てデリケートすぎんじゃない?

ちょ~っとコンセントに足とられただけなのにさあ」


「しょうがないでしょう、小型ですし……加えてあまり高性能ではないんです。

一度電源が落ちたら、再起動は出来ない仕組みなんですよ」


「けっ、ちゃっちいなあ!」


「も~……ブチブチ言うなよケイ兄~。

結局あのノート見てないから、よく分かんなかったんだしさ。

それに、こんなこっそり聴かなくても、シン兄なら。

聞いたら話してくれるよ?」


「イサキ、あんた偉い!

たまーにオットコ前よね!」


「……シンラの弱いとこ、なんて。

面と向かって聞けるかよ……」


「王も、たまーに。

気ぃつかっとんやなあ」


「……知らなかったんだよ。

だってあいつ、俺の前では兄貴分だからって……気ぃ張ってばっかいやがるもん。

あんなにも親父さん、お袋さんのこと、考えてたなんてさ……」


「せやなー、たしかに。

ワイも意外やったわ。

あのノート……九回二死のツースリーからの逆転ホームランみたいなもんなんやないか?

シンラのこと、まだこんなちっこい頃から見とるけど、あんな一面があったなんてなあ。

親っさん亡くなって以来、てっきりイッちゃんのことを父親やと思とるもんかと……」


「……そうですね。

彼の言うとおり、夢とは見てる本人の理想や憧れなんかが反映されたりする訳ですし。

彼が……王様にスカウトされて城に来るまでは、親子3人仲良く暮らしてたことでしょうしね……やはり、その頃の幸せな思い出は大切なんでしょう」


「シン兄……ずっと、寂しかったんかなあ?」


「もーう……シンがそんなにヘタレな訳ないでしょ!

何も特別騒ぐことない、離れてた両親を思いやって何が悪いってのよ!」


「……アカネ……」


「何よぉ」


「お前、たまーに。

ぽろっと、いいこと言うよな」


「全くねー。

男って面倒。

強いとか弱いとか、そんなのどうでもいいじゃんって時あるのに。

だからさぁシンも、モモになら。

思ってること全部話して、スカッとして帰って来ると思うよ。

で、シンの方から今回のことは話してくれると思う。

だってシンにとって、ここは家だもの。

ケイみたく余計な詮索とかしなくても、私達はシンを信じて待ってりゃいいのよ。

……ね、結果オーライってことで!」


「……アカネさん、盗聴器聴けなくしちゃったからさぁ、必死のフォロー?」


「やっかましわね……たまーにあんたのその突っ込み、イラッとするわ……」


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