ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
ケイゾウからこの仮説を聞いたウーさん、眼鏡を光らせ本領発揮したそうだ。


パソコンを某ファミコン漫画の必殺50連打のごとくに見事に叩いて、30秒かからないうちに当時の新聞記事を画面上に出したらしい。←ケイゾウ談。 そんなにキーボードを叩く作業とも思えないけど、スルーしておく。


指揮監督だった父さんの『落石、退避ー!』の声を聞いて、一命をとりとめた村人の感謝の言葉などが掲載されていたそうだ。


その記事から、再びウーさんはキーボードを巧みに操作し、十数分後には、あの事故現場に遭遇した村人とチャットしていたそうだ。


その村人にウーさんは、軽くハッタリをかましたらしい。


『実は匿名の告発で……あの土砂崩れで亡くなったダイスケ氏についてですが。

あれは殺人だった、あの土砂崩れは仕組まれたものだ、などという声があがったものですから。

当時の状況が分かる方に、こうして極秘に事の真相を聞いている次第です』


村人いわく。


『あれは間違いなく、事故だった。

傍目からは、起爆装置などを隠しておいてさりげなく爆破をおこし、土砂を崩す……などと考えられなくもないのかもしれないが。

村で唯一そういった機械工学を専門とし、今現在も唯一パソコンを使える私が言うのだから、これは間違いない事実だ。

当時そんなことが出来た人がいたとすれば、それは私だけだし、そして私はそんなことはしていない。

そもそもダイスケさんは、人に恨まれたりする方じゃない、とても立派な方だった。

そんな嘘情報流した奴、突き止めて厳重注意して頂きたい、甚だ名誉毀損だ』


文面から察するに、なかなかの石頭そうな村人の、かなりご立腹な長文レスにウーさんは、うぅん、と唸ったらしい。


……つまり。


父さんの事故に不審な点なんてなかった。


父さんはやはり、名誉の事故死だったのだ。


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