ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
*****


……病院の屋上で。


泣くだけ泣いたら、急に眠気が襲ってきた。


リンの気持ちがよくよく分かったものだ。


「……なんか上にかけるもの、とってくる」


彼女が立とうとしたから、その腕を引いて引き留めた。


「……いいから」


「でも……冷えてきたし。

寒いでしょ。

風邪、ひいちゃう……」


「……少しだけ……だから」


眠さのせいでぼんやりとして、うまく言えない。


少しだけ……どうせ、城に戻ったら。


こんな風に我が儘なんて、言えない。


今のこの間だけでいいから離れないで、そばにいて。


優しくして欲しかった。


……そんな思いまで伝わったかは、分からない。


だけど彼女は、立ち上がらなかった。


「……肩貸したげる。

よっかかっていいよ。

後、これ……」


彼女はつけていたストールを外して、自分の肩にかけてくれた。


「ないよりいいでしょ」


「……ありがとう」


「いいよー。

いつも助けてもらってるから。

今は、ゆっくり休んで」


……温かかった。


安心感からか、急に力が抜けた。


既に目を開けていられなかった。


彼女は、自分に接している側……左側の手で。


髪を梳くように頭を撫でてくれた。


……覚えてはいないけど、多分。


昔、母さんに同じようにして寝かしつけてもらったんだろうな、なんてことを考えた。


そのまますぐに、眠りに落ちた。


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