ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
「あら、過去形にしちゃうの?」


おばさんが、明るい高い声で驚いてみせた。


「え?」


「……おじさん、おばさんが。

うちにずっといたらいいって……言って下さったの!」


真ん前のリンが、嬉しそうにはにかんで笑った。


思わず二人を振り返る。


二人も笑って肯いてくれた。


「よく手伝ってくれるしね。

うちも助かるから」


「そうよー大体ねぇうちのドラ息子ども。

まだ12のくせして、なんでか自立心だけはやたら強くてね。

二人とも、家あけすぎなのよ。

それはそれでいい事なんだろうけど……親としちゃちょっと、寂しいじゃない?

それに、女の子、欲しかったしね」


「なんだよ~……ちゃんと親孝行してるよー?

兄ちゃんよりよっぽど、家に帰ってるしさあ」


ユウキがちょっと拗ねたようにおばさんに反論する様を、リンが笑いながら見ていた。


なんだろう……たしかにこの二人、なんかいい雰囲気っぽい。


イッセイの奴がそう言ったのが、なんだかよく分かる。


「……リンのこと、よろしくお願いします」


「あらやだ、も~……意外と堅っ苦しいとこ、お母さん似よ?

シンラ君。

こちらこそ。

いつも馬鹿兄貴の方がお世話になってるんだから」


「……さ、帰ろうか」


おじさんが、屋上に続いてる非常口の方を見ながら言った。


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