ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
リンが遠慮がちに声をかけてきた。


「……お兄ちゃん」


「ん?」


「……って、呼ばせてもらって……いいのよね?」


「……なーに今更言ってんだ」


デコピンしてやる。


「また今度、遊びに行くよ。

モモとイサキも連れてさ。

……そん時は、「レーズンロール、焼いたげる。

なんたってお母さん直伝だからね」


「へっ……よく分かってんじゃねぇか!」


ようやく、自分にも笑ってくれた。


嬉しかったから、自分もとびきりいい顔を返してやった。


……おじさんとおばさんに、少ないですが、と言って封筒を渡す。


渡しそびれた商品券だ。


こんなところで使うとは思わなかったけど。


「リンを頼むには、全然足りてませんが……また今度お店の方、手伝いに伺わせて頂きますから」


おばさんは、気持ちよく遠慮しない人だ。


喜んで受け取ってくれた。


ちなみに、リン含めて家族でおいしいものを食べるそうだ……おそらく、その中にイサキは入ってないんだろうけど。


おじさん達と別れてモモと二人、城への帰路につく。


「よかったねーリンちゃん。

引き取ってもらえて」


隣の彼女が、そう言って笑いかけてくれた。


「……」


「イサキんちなら安心よねー。

かわいがってくれそうだもんね。

ね、近いうちに遊びに行こうね、3人で。

私もレーズンロール食べたいし!」


なにか、気の利いたことでも言えたらいいんだろうけど、いかんせん……今はそんな気分じゃなかった。


目下、本日の自分を振り返り中。


自分で評価するにしても、あまりにもかっこ悪すぎた。


それでも、彼女にならいいか、なんて思える。


こんな醜態さらしたのがケイゾウやイサキなら、はっきり言って合わす顔がない程恥ずかしい。


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