ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
見慣れた店内……いつもイサキのおばさんが立ってるレジに、今日はまだ幼い女の子が立ってる。


この子が自分の義妹なのか。


「いらっしゃ……」


いらっしゃいませ、と言おうとしたんだろうその言葉は途中で止まった。


かわいらしい子だった。


あの母親に、よく似ている気がした。


「おう。

今日は、おばさんは?」


いないことは知っていたけど、会話のきっかけが他には見つからなかった。


「きょ、今日はいな、いないです。

……や、おりません、です。

わ、私、店番……してます」


「そっか。

一人か?」


「や、母が……あ、いや、その、……ど、どうしよう……」


まだ小さいのに、すっごい気ぃ遣ってる。


さすがあの母親譲り、というか。


自分のことも、ちゃんと腹違いの兄だと聞かされて知ってるんじゃないか、と思った。


だからこそ、いきなり現れた義理の兄に母親の話をしていいものかどうか、戸惑っているのだろう。


何も自分から、わざわざ義理の兄を名乗る必要もないだろうし……早いとこ一線引いて、安心させてやりたかった。


「……えっと……」


すっかり上目遣いの義妹に、にっこり笑ってやった。


「そんな緊張すんなよ~。

別に取って食おうって訳でもないし、普通に客、だぜ?

ここのおじさん、おばさんとも顔なじみだし。

言わば、オトクイサマ。

な?

まだちっこいのに、お手伝いしてんだ。

偉いな!」


義妹はぽかんとして、まじまじと自分の顔を見た。


「あ、……ありがとう、です…」


彼女は礼を言いつつ頭を下げた。


義兄であることを目の前の義兄は知らないのだ、と判断したのだろう。


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