ウェスター国戦師(いくさし)の書。2~優しい後悔~
彼女の心底安心した顔を見て、次の言葉を選んでいると。


「すいません、こちらのおうちの方はいらっしゃいますか?」


一人の若い女性が、勢いよくドアを開けて駆け込んで来た。


「は、はい、私です……」


義妹は、おずおずと彼女の前に歩み出た。


しかし、女性は慌てて首を横に振る。


「……お嬢ちゃんだけ?

大人の方は?」


かなり急いだ、切羽詰まったような口調だった。


「……俺、知り合いです。

なんですか?」


……事情は分からないけど、思わず間に入ってしまった。


青年の自分が申し出たことで、彼女がやや安堵の表情を見せた。


「ウェスター第5幼稚園の者です。

こちらの従業員さんに、配達に来て頂いてたんですけど」


「ええ、……何か?」


「配達して頂いて、帰られる際に、急に。

頭を抱えてうずくまってしまわれて……」


「……はい?」


「病院にお連れしようとしたら、大丈夫だから、大事(おおごと)にしたくないから、の一点張りで。

家まで送って欲しいとおっしゃられたので、今車でお連れさせて頂きまして」


「……そんな、お母さん!」


義妹が、女性の横をすり抜けるようにして外へ駆けていく。


「すいませんが、彼女、おそらく歩くのも困難なので……一緒に来て頂けますか?」


彼女が、自分に目配せする。


……ちょっと待て、なんだ、この状況……。


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