レギンレイヴ -Reginleif-


「ル──いえ、殿下…
あの、間違ってはいないとはどういう意味です?」


声を掛けてきたのはルイだった。
皆がいる前では私とルイは下官と上官の立場故に、態度を改めた。
そんな私にルイは一つ頷き、私の質問に答えてくれた。


「あぁ、実はこの機体は指揮官機用で、その指揮官機用のEFをワルキューレタイプって呼んでるんだ。
これはそのワルキューレタイプ“ブリュンヒルデ”。
ワルキューレタイプには3パターンの機体があるのだが、まだ2パターンは未完成なんだ。
この機体だけ完成したからこちらへと先に運ばれてきたのさ」


「ブリュンヒルデ…」


教えられた名前は、聞き覚えがあった。


「それで先程の問いに対しての答えなんだが、ブリュンヒルデっていうのは、神話に出てくる戦死者を選ぶ者…又は、戦乙女“ワルキューレ”の一人だ。
だから、天使という表現も
間違ってはいないんだ。
ブリュンヒルデは天界に仕えてる者だからね」


思い出した。
幼い頃、この神話の物語を母上が寝物語としてよく聞かせてくれていた。
ワルキューレは全部で9人にいて、主神オーディンに仕える者である。


「戦死者を選ぶ者、戦乙女…
確かに、この兵器には相応しい名ですね」


この機体で、帝国に戦いを挑むのだ。
この機体によって多くの敵の命が散るだろう。
まさしく、戦乙女である。


「このブリュンヒルデ以外に形が同じ機体が幾つかあるだろう?」


辺りを見回すと、確かにこのブリュンヒルデ以外は皆同じ機体のようである。


「えぇ。あれらは?」


「あれは、ワルキューレタイプと違って汎用機なんだ。
タイプ名はエインフェルト。
ワルキューレが選定するエインヘリャルが名の由来だ。
エインヘリャルはワルキューレによって選ばれた戦士だ…
そして、主神オーディンの為に戦う戦士。
……さて、君達はまず、エインフェルトタイプで訓練を行ってもらう」


話の最後の言葉は、ここにいる全員に向けた言葉だった。
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