離婚、しませんか?
「ぅぐっ、ちょっ、離して……、ってば!ねぇちょっ……、きゃあっ!?」

息苦しいやら痛いやらでゼーゼー喘いでいたら、いきなりふわりと体が宙に浮いて視界一杯にリビングの天井が映り込む。

「ひ、光さん……!?」

夫の両腕に横抱きにされてしまったのだと理解したその時。

「離したら逃げるだろ。一方的に別れたいなんて許さない。
なんで急にそんなことを言い出したのか、理由……きっちり教えろよ」

私の心の奥底まで暴こうとするような双眸が、見下ろしていた。

理由。

それは、あなたがーーーーーーーーーーーーから。

思い出すだけで、つきりつきりと疼く胸。
震える吐息を抑えながら思い切って言葉にしようとしたそれは、音にはならなくて。
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