離婚、しませんか?
狡い私は、あの約束を持ち出してさっさと全てを終わらせようとした。

「だって、初めに約束したじゃない。私とあなたはいつでも……っ」

そう口にした瞬間、切れ長の猫目がすうっと細められ、射竦めるような眼差しに思わず肩が跳ねる。

「約束は、した。でも理由が知りたい」
「そ、れは……」
「ちゃんと納得できる理由じゃない限り、離婚はしない」
「そんなの……っ」

卑怯だ、契約違反だって叫ぼうとしたけれど。

「なに?みちる」

長い睫毛が影を落とす二つの瞳からは光が消え去り、凪いだ水面のような、それでいて底知れぬ感情を湛えているような琥珀がじっと見つめてくるから。
逆らうな!と叫ぶ本能に従って咄嗟に口を噤んだ。
< 11 / 126 >

この作品をシェア

pagetop