離婚、しませんか?
……違う!


オレが欲しいのはーーーーーー彼女の身も、心もだ。

心ごと、オレを求めてほしい。
それまでは、この欲望も焦燥も抑えろと、出口を求め勝手に暴走する自身を無理矢理に捩じ伏せようとしたその時。

「……ん……ひか、るさ」

それは、小さな呟き。

静寂が広がる部屋に溶け込むように消えていったそれは、けれど確かに彼女の声。
そして、その唇が紡いだのは、オレの……名前。

ただ名前を呼ばれた、それだけ。なのに。
どくん、とひとつ大きく波打った胸が煩く騒ぎ立てる中、彼女が目覚めたのかと一瞬強張った体が、続く穏やかな寝息に再び弛緩する。
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