離婚、しませんか?
さっきの寝言は。

もしかして、オレの気配を感じ取ったのかもしれない。
もしかして、オレの夢を見ているのかもしれない。
夢でオレのことを求めてーーー。

もしかして、それほどに彼女の中のオレの存在は。

堪らず、前髪に見え隠れするその額にそっと口付けて、目を覚まさないのをいいことに、彼女の瞼も睫毛もこめかみも頬も鼻先も、啄んでゆく。

擽ったいのか、身動ぎした彼女の顔が僅かに横を向き、そこから現れた白い首筋にも口づけを落とせば、もうそのまま吸い付きたくて、ここにも襟元から覗く鎖骨にも、パジャマに隠された彼女のきっと甘く柔らかなその肌の隅々までも、オレの徴(しるし)を刻み付けたくて仕方なくなる。
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