離婚、しませんか?
「夢の中の実花は……笑ってるんだ。最後に見た泣き顔じゃなく、あいつ、『ひーくん、幸せになってね。大好きだよ』……そう言って笑いかけるんだ。こんなオレにね」

そう告げた夫の声は震えていて、絡め合った指先に痛い程の力が込められる。

「そんな夢を見る度に思い知るんだ。違うだろ。オレだけが幸せになっていいはずなんかないよな、って」

そんな……。

「そんなこと、ない……っ!」

夫の真正面に回り込んでその胸の中に飛び込めば、勢いに押された夫の体がベッドに沈んでそのまま二人して抱き合ったまま横たわってしまうという態勢に、恥ずかしさが込み上げる余裕もなく顔を上げて、戸惑ったように私を見上げる夫に必死に言い募る。
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