始まらなかった恋
「お前ら…… え? なんで別れたんだよ!」
何を思ったのか焦ったように佐藤が問う。
「なんでって…友達以上にはなれないって思ったからで…」
「友達以上に思えないなら、友達に戻るのが普通だろ? なんで友達以下になる必要がある?」
必要? それは、私が中谷の今後の恋愛を応援したくないからで…
でも、中谷はなんで?
「友達には戻れないって…」
「どっちが?」
「二人とも…」
「…お前らさ。 どっちもお互いを好きなのに、お互いが自分を好きじゃないって勘違いして別れたんじゃないか?」
「中谷は私のこと好きなんかじゃないよ!」
「俺もそう思ってた。 中谷から山岡を好きだなんて聞いたことなかったし。 けど、友達に戻れないなんて、それは好きだって気持ちがあるからじゃないのか?」
いつもふざけている佐藤の真剣な顔。 笑っていい場面ではないのだろう。
黙る私に佐藤は追い討ちをかける。
「自分が中谷を好きだってこと、否定しなかったって気づいてるか?」
と…
私の顔はきっと真っ赤になっていると思う。
熱くなった頬を隠したくて咄嗟に俯いてしまう。
< 18 / 31 >

この作品をシェア

pagetop