始まらなかった恋
教室に着くと木村がすぐに山岡を見つけた。
「楓? あれ? 待っててくれた?」
「あの、中谷を…待ってて」
「え?」
バッと俺を振り返る木村。 なんだか顔が怖い。
「待っててもらったんだ」
「別に私の許可なんて要らないからそんな顔しなくていいけど…楓を傷つけないで」
それだけ言うと鞄を持ってバイバイと山岡に手を振って教室を出て行った。
「歩きながら話すか?」
教室で二人っきりで話すということが恥ずかしかった。
こういうところが女慣れしてなくて格好つかない。
「うん」
キョロキョロを視線を彷徨わせて山岡は頷く。
二人並んで校門を出ると、
「初めてだね」
と山岡は言った。
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