始まらなかった恋
二ヶ月の間、デートらしいデートはしていない。
数人でカラオケやゲーセンへ行ったことがあるくらい。
でも、私にとっても中谷にとっても初めてのお付き合いだったから、ゆっくりゆっくりでいいと私は思っていた。
けどきっと、男子の言うお付き合いはそんなことではなくて、少なからず男女の触れ合いを求めていたのかもしれない。
私とはそういう関係に発展する見込みがないと捨てられるのか…
だから、昨日はラインが無かったんだ。

「中谷って彼氏って感じじゃなかった。 学校でも休みの日でもいつも誰かと一緒にみんなで遊ぶって感じだったから。 ラインはまめにくれたけど、それだって特に内容なんて無くて、私もいつも意味ないことしか返せなかった」
「楓?」
「ごめん。急に何言ってるって思った? なんか、中谷にとって私は友達のままだったんだなって…」
「仲良しには見えてたけど…」
だからこそ、由香利は中谷に私のどこを好きなのか聞こうと思ったんだよね。
選ばれた理由がわからないと私が言ったから。
まさか、そんな答えが来るとは思わずに。

「『別れたい』って言えないのかもね、中谷」
私は言う。
「え?」
「由香利に私を好きじゃないって言ったも同然だよ? そういう意図がないと…普通言わないでしょ?」
「…」
由香利は難しい顔をしている。
「私から言って欲しいのかな。 自分から付き合おうって言ったからフるみたいになるの可哀想って思ってくれてるのかも」
「楓はさ。優しすぎると思う。 そんな風に相手の都合を考えなくてもいいんじゃない? 何アイツ!?腹立つ!って言っていいんだよ!!!」
「え~」
私は笑う。 当事者の私より由香利が怒ってくれたから。
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