始まらなかった恋
「中谷…」
「おう、山岡おはよう」
今日もくしゃっと笑う中谷を見るのは辛い。
「ちょっといい?」
「ん?ああ」
小さく珍しいなと中谷は言った。
確かに私から呼び出すなんて初めてかもしれない。

「どうした?」
「あのね…友達に、」
「ん?」
「友達に戻ろうか」
「え…」
「二ヶ月楽しかったけど、やっぱり私達友達の枠を超えられないっていうか……だからもう無理だと思う」
中谷が思っているだろうことを代弁しているのに、中谷は俯くだけ。
「それが答えか?」
「…なんの?」
「昨日、木村に言ったことへの」
木村とは由香利のこと。
やっぱり、由香利に言った言葉は私に伝えたくて言ったんだ。
「うん」
「分かった。 けど、俺は元カノと仲良くする男を信用ならないと思ってるタイプだから、友達には戻らない」
そう言って去って行った。
良かった…私も友達には戻れないと思っていたから。
だって、友達を続けていたら中谷に新しく彼女が出来た時、私は祝福しなくてはいけないから。
側に居れば居る程辛い。
なら、関係なくなった方がずっと楽。

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